大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和33年(す)34号 決定 1958年2月04日

本籍

愛媛県温泉郡浮穴村大字高井一三〇三番地

住居

兵庫県伊丹市南本町八丁目二六番地 南本町住宅四〇八号

現在

大阪拘置所在所

申立人

相原敏行

大正三年一一月二六日生

右公文書偽造同行使、私文書偽造同行使、詐欺、背任被告事件(当庁昭和三二年(あ)第三〇五一号)について昭和三三年一月二一日当裁判所のした上告棄却の決定に対し申立人から別紙の通り適法な異議の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。

主文

原決定を取消す。

当裁判所がした昭和三三年一月一〇日の上告趣意書最終提出日の指定を同年三月一三日に変更する。

理由

当裁判所は昭和三二年一二月六日表記事件についての上告趣意書最終提出日を昭和三三年一月一〇日と指定の上被告人及び弁護人に告知したのであるが被告人に対する告知は肩書住所宛に郵便によつてなされ、その送達報告書によると家族の何人かが受領したものと認められる。然るところ被告人は原審において保釈決定を受けていたが、保証金未納のため当時なお大阪拘置所に勾留中であつて、かかる場合の送達は刑訴五四条により準用される民訴一六八条の規定により監獄の長に宛てなされなければならないのであるから、被告人に対する告知は適法にされていなかつたことになる。そして弁護人も被告人も上告趣意書を期間内に提出しなかつたので(奥田弁護人の上告趣意書は昭和三三年一月二〇日附で同月二一日当裁判所に到達している。)、当裁判所は昭和三三年一月二一日上告を棄却したのであるが、右のように被告人に対する上告趣意書最終提出日の告知が適法にされていなかつたのであるから、その違法は原決定に影響すること明らかであり、刑訴四一四条、三八六条二項、三八五条二項、四二八条二項、四二二条、四二六条二項により取消すべきものと認める。そして同四一四条、三三七六条、刑訴規則二六六条、二三六条により新に上告趣意書の最終提出日を定めることとする。

この決定は、裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 河村又介 裁判官 島保 裁判官 小林俊三 裁判官 垂水克己)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例